9/20/2007

再び AOR?



AOR?



当時のカウンター・カルチャー

 

ベテラン勢による原点回帰的な試みから始まったアンプラグド

 

 

AOR=Adult Oriented Rock。お馴染みの図式である。しかし"AOR"という表記

で本書のような作品群をイメージするのは、それこそ日本の音楽ファンだけだ。米国でA

ORといえばAlbum Orientedの略であり、"R"はRockとRadioの双方を意味する。つ

まりシングル・ヒットを指向せず、アルバムをトータルに聴かせようとするロック、あるい

はそれをオンエアするFM局、そんな言葉だった。日本でいうAORはAC(アダルト・

コンテンポラリー)と呼ばれ、ここにはフュージョン系のインストゥルメンタルや、クワ

イエット・ストーム系のブラック・ミュージックも含まれる。しかしアルバム・オリエン

テッドという捉え方は、あながち的外れではない。それは全盛期のAORには、生活を彩

るBGMとしての効用があったからで、アルバム1枚丸ごと楽しめるというのも重要なフ

ァクターだったのだ。

 

最近は1曲良ければOKという傾向が見受けられるが、これには断じてノーと言いたい。

AORと呼ばせるには、トータライズされたテイストが必要なのだ。

 

スタイルを楽しむだけでなく、同時に感情や精神性を共有するための音楽なのである。

 

ポップ・ミュージックに、もっと大人っぽいサウンド、つまりジャズやソウル・ミュージックの

エッセンスを加えてみたら・・・

 

"大人のゆとり"を感じるヴォーカルのセンス

 

トロピカルなリラクゼィション・サウンド

 

センシティヴなアコギと揺れるとようなエレピの音色

 

トロピカル風味とレイド・バックしたムードを品良くまとめてみせた。

 

ぬくもりのあるメロディとハーモニーが素晴らしく、

 

ヒューマンなヴォーカルとまろやかなアコギの響き、

 

これぞ"エヴァー・グリーン・ミュージック"と呼ぶにふさわしいサウンドだ。

若葉が急に萌え出して、街に活気が甦る頃・・・・・・。

あるいは風の色がゆるやかに褪めてゆく夏の終わり・・・・・・。

音楽が決して流行やスタイルではないことを教えてくれる、そんな素敵な"なごみ"の1枚である。

 

キャスティングは相変わらず豪華でも、プレイは実にストイック。

 

ナイーヴかつピュアな心情

 

その芳醇なテイストと深いコクには、丹念に磨かれた技術とスピリットが息づいていた。

 

フランクスのヴォーカルと楽曲の質感は現在までまったく変わっていない。

 

安らぎの時間を演出してくれる。

 

バード・バカラックにも通じる美しいメロディを紡ぎ出す名ソングライター

 

温かい包容力を持たせた

 

妙な先入観や既成概念にあ捕らわれず、音楽のありのままを受け入れる。

 

映画のワンシーンを思わせるジャケットを含め、トータライズされたドラマティックな魅力は本作ならでは

 

圧倒的な歌唱力を持つスーパー・シンガーにして、"ミュージシャンズ・ミュージシャン"と賞賛される

凄腕サウンド・クリエイターでもあるジノ・ヴァネリ。

 

そのヴォ-カルは沸き立つようなエナジーと豊かな声量を持ち、しかもそれをコントロールし得る表現力と

絶対的なスキルも有している。

 



 情感豊かに仕上げた傑作

 

商業主義の業界と距離を置いた彼は、シンプルでシャープな音作りを試みたり、

ジャズに接近しながら、今も自分の音楽家としての欲求を満たすような創作活動を続けている。

 

熱気を孕んだマイアミ・ソウルの甘いムードと、哀愁を帯びたメロディ・ライン

 

無理をして音を重ねずに充分な空間を残している。だからストリングスやブラス、エレピのフェイザーが

とてもヴィヴィッドに伝わってくるのだ。それが彼自身が失わずにいる青臭さと相まって、独特の味にもなっている。

 

人生の光と影をくっきり映し出す。時と運命に翻弄され、ひとときの悦楽にもありつけない。

そんな男の哀愁と孤独を感じさせる、隠れた名盤だ。

 

都市の暗部まで知り抜いたホントの都会人には、彼らこそがリアルなシティ・ミュージックなのかもしれない。

 

どうしてこんなに優しいんだろう、どうしてこんなに穏やかなんだろう・・・・・・。

このアルバムを耳にするたび、そんなことを思う。

 

遅れてきたビートニク。

 

サウンドはスペース感を生かしたフュージョン寄りのハイブリッドなもので、

リズムは滑るようにしなやか。ちょっと投げやりなヴォーカルも、独特の雰囲気を放っている。

 

本末転倒かも知れないが、このアルバムを語る時には、どうしてもグレイドンの演奏及び

プロダクション・ワークを第一義にしておきたい。もちろんそれは本来、マークの才能を活かすために

嵩じた手段だった。

 

筋金入りの極上品だったワケ。

 

この作品もほとんどがミディアム~スローで、郷愁を呼ぶようなノスタルジックな旋律が特徴。

酸いも甘いも知った大人が、まだ青臭かった昔を振り返るようなアルバム

 

今にして思えば、確かに"クリスタル・ブーム"は女性リスナーを獲得し、AORをポピュラーにした。

しかしファッション化させてしまう両刃の剣でもあった。だがその根底を支えていたのは、

レコード店でメンバーを確認して"クレジット買い"するような、純粋な音楽ファンだったと思う。

サラッと聴き流しても雰囲気を楽しめる。それでいて、アレンジやコード進行を分析しても、

感心するほど奥が深い。それが当時のAORだった。

部屋でくつろぐ時、ハンドルを握る時、アウトドアに興じる時、恋人と愛を語る時・・・・・・。

いつもかたわらでAORが鳴っている。それが自然な時代だった。

 

タイアップという暴力的な情報操作でプロモーションを展開する昨今と違い、

良い音楽は口コミで広がってゆく・・・・・・そんな幸せな時代だった。

 

素性は純朴で優しいオッサンという感じ

 

常にマイペースを貫き通して活動しているベテラン・シンガー・ソングライター。

まったく飾り気のないシンプルな作風は、コンサバティヴとも言える。

しかしその素朴な味は、もはや彼の個性として確立。

 

余計なことを考えずにボサッと聴くには、とても気持ちの良いアルバム

 

しっとりした旋律に、フェミニンな詞。恋に悩み、愛に傷つき、それでもまた誰かを求めずには

いられない。そんな男のひとり言を綴った、悲しくホロ苦い詩(うた)の数々。

思春期の頃ならば、誰だってそんな想いをしたことがあるだろう。

 

日々の暮らしに疲れ、自分を見失いそうになった時、

こんなにも優しい音があるのを思い出してほしい。

 

商業化/大衆化を内包しているのが普通だった。なのに彼は実に恣意的で、純粋に音楽的洗練の

プロセスが聞こえてくる。本人の才能もさることながら、恵まれた環境が良質の音を生んだ絶好のサンプルだ。

 

私小説的に詩(うた)を普遍的で大衆にも通用する"歌"へと消化させた彼

 

骨太かつ臨場感のあるサウンドが打ち出された

 

彼らは気負うことなく、自然体で音を創ったという

 

纏ったファッションはその時々で変わっても、中身の人間まで変わってしまうワケじゃない―彼らはきっと

そう言いたかったに違いない。

 

音楽はスタイルじゃない。肝心なのは人間なのだと。

 

あの頃の高揚した空気感が、どれだけAORを輝かせていたか。またAORが自分たちの生活に

どれだけ潤いを与えてくれたか。その一体感の素晴らしさを実感し、次世代に語り継ぐことができるのは、

リアルタイム派だけなのだ。

 

季節やシチュエーションに関係なく、いつも五感で「海」を感じているかどうか。



たとえ都会に住もうとも、喧騒から離れて心を落ち着かせれば、何処からともなくさざ波が聞こえてく

る・・・。



オーガニック・テイスト



リラックスしてオープン・マインド



心に「海」を持っている人



ブルー・アイド・ソウル



ほのぼのした甘いヴォーカルと、ゆるめのアコースティック・グルーヴ

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