11/21/2007

スローライフ/筑紫哲也








スローライフ/筑紫哲也

高田渡
「若者の反乱」に触発されて始まったフォークソングはやがてニューミュージックなどと名前を変えたが、それまで大人たちが用意して若者たちに供給してきた既成の音楽に対抗して活動した「対抗文化(カウンターカルチャー)」であることでは共通していた。彼らはその実力ゆえに、また若者たちの支持と共感を集めたがゆえに、次第に主流(メインストリーム)に進出し、世に知られる存在になっていったが、その分だけ「対抗(カウンター)」の色は消えていった。
フォークの草分け的存在のひとりだった高田渡は、その流れに乗らなかった。その力がなかったからではなく、その意思がなかった。

おれたちいつも少数派だったな。だけど、『真実』の少数派だよ」安東仁兵衛

それにも増して大切なのは、従来型・多数派の思考に身を委ねるのではなく、自分で考え、行動する個人がどこまで育ち、力を持ち、多様性のある社会を作れるかだと思う。
単一の価値(ものさし)で、それを測る社会は息苦しい。大多数はそこでは敗者になってしまうから、不幸な人だらけになり、不機嫌な、とげとげしい社会を作ってしまう。それぞれに、さまざまに多様のものさしがあることが、お金以上にその社会を豊かにする。
強いて人生の勝ち負けをつけたいというなら、「ああおもしろかった」と臨終の際にどこまで言えるかが、限りある生の勝ち負けを決めるものさしだと私自身は思っている。もちろん、別の尺度があってよい。

1、自発性こそが全ての出発点であり、命である。上意下達、機関決定、労組型の「動員」「日当」などのルールはない。
2、ゆるやかな結び付きを組織原理とする。参加者が出来る範囲で、割ける時間をつかってやれることをやる。
3、「小さいことはよいことだ」―少数派であることを肩身が狭いとか、恥だとか思わず、むしろ誇りにする。
4、他の「同好」のグループとの結び付きは、「水平型」「ネットワーク型」を目指し、上部組織-下部組織の「垂直型」にならない。
5、「正統性」に固執しない。「富士山の頂上に辿り着くには、いろんな登山口がある」と思ったほうが良い。
6、寛容とゆとりを持とう。
7、「快」「楽」を最優先させよう。いくら正しいことをやっていても、それが苦しげに見えたら、多くの人の共感を集めることはできない。

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