12/26/2007

知的な大人へのヒント・林望









知的な大人へのヒント・林望

もてなしの心は金では買えない。やたら高い金をかけて特別の食器なんかを買い込んで、それを意気揚々と出す、そういう心がけはもてなしの美しい心から遠いものです。

大きな声を出さないということは、たとえばイギリスなんかでは、紳士の必須の教養の一つです。大声で話すだけで、もうその人間は無教養だと見なされる。だからともかく小声で話すように意識したい。
できるだけ、相手に嫌な感じを与えない。温かい感じを与える。そして、言っていることがはっきりとわかるように話す、ということはインテリジェンスを感じさせる良い話し方の最大の要件です。

人間四十になったら自分の顔に責任を持たないといけないといいますが、本当にそのとおりだと思います。たとえば、必死に勉強している受験生を見ると、いかにも勉強で磨いた顔をしている、という感じが見えることがあります。
顔というのは内面の窓、その人の人間性の看板のようなもので、内なるものが如実に顔に出ます。

叡智はただでは得られません。身銭を切ってこそ内奥にしみ込ませることができる。その対価を払わなければ、本当の情報を身につけることはできないと、このことだけはよくよく肝に銘じてください。

インテリらしい話し方ってのは、「自慢話」はだめなんです。その反対に行きたい。自分を戯画化しておのれを低くして話す、それが、まずもってインテリらしい話し方の基本です。

人間の心の修養というものは「どうやって自己宣伝をしないように自分を抑制するか」ということじゃないか、とこの頃つくづく思うことがあります。
インテリらしく、ということからすると、まさにここが人間関係の最代の留意点で、自己を抑制できるのがインテリジェンスです。そう思って、誰もがその点に注意して人と接したら、ずいぶん生きやすい社会ができるような気がします。
自己宣伝というのうは、実は「自信」ということと裏腹の関係にあります。「空き樽良く鳴る」と福沢諭吉の諭していますが、自己宣伝というのは、ある意味で未熟な自己を悟られまいとする防衛反応のようなもんであります。

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