1/27/2008

こんなバンドがプロになれる! 高垣 健










こんなバンドがプロになれる! 高垣 健


君たちは、自分自身だけが頼りじゃないか。

使い捨ての業界なんだよ。

一生とは言わないが、少しでも長く、大好きなロックを続けるために、デビューについては、慎重に真剣に、自分の音楽を鍛えてほしい。

才能を磨いてほしい。

この世界では、「持続力」が最大の武器になるんだよ。
そしてスタッフの皆さん。

どんなにすばらしいアーチストでも、横にいるスタッフによって、大きく成長するか全くダメになるかが分かれてしまうんだ。

僕が、ライブハウスで、とてもステキなロックバンドに出くわしても、彼らについているマネージャーと話が合わなくて辞退させてもらったことがいっぱいある。
その後の結果を見ると、そのまま他社からデビューしたものの全く売れないまま終わったか、新しいマネジメントに交代して成功したか、のどちらかだ。
プロダクション、レコード会社のスタッフの役割は、一人のアーチスト、一組のバンドの人生を変えてしまうくらいの、責任の大きい、重要なものである。

これだけ新人のアマチュアバンドが増えて、そのレベルも高くなっているというのに、それに見合うスタッフは圧倒的に不足している、だから、新人アーチストを探す前に、優秀なマネジメントスタッフを探そうということが、僕たちの合言葉になっているほどだ。

また、その逆に、マネジメント・プロダクションもレコード会社のスタッフを徹底的に吟味するというのが常識になっている。
才能豊かなアーチストと、それにふさわしいスタッフがめぐり会えば、作品としてのCDは、必ず売れる。



初めて見るアマチュアバンドのライブで、何だか今までに聞いたことのない曲や、言葉づかいや、ブッ飛んだライブパフォーマンスを見たりしたとき、僕は迷わず楽屋にかけつける。

そんな個性を磨いてほしい。

個性=オリジナリティがあれば、ジャンルは全く関係ない。

しかも、君の努力と研究次第で個性は育つということを、ぜひ、忘れないでほしい。



現在のロックシーンをふり返ってみると、先にも言ったが、ジャンルは関係なくなっている。

楽曲である。
メロディである。

歌詞である。

歌である。

特に、歌詞の内容が、時代を反映しているか、本音の気持ちをあらわしているか。


特に、ロックは個人的な音楽だ。

ごく数人の共感者が、まず最初に現れる。

彼らが「共犯者」となって、ジワジワとその輪を広げていく。

時間がかかる。

根性も必要だ。

挫折するときも多い。

しかし、いつの日にか、これが社会現象になって、君はビッグスターの勲章を獲得する。


テレビCMのタイアップなどで、大々的にデビューを飾ったアーチストの転落は実にみじめだが、ライブハウスで鍛えぬかれたバンドが、何年もかかってトップスターの座に登りつめるのは、最高に気持ちがいい。


アーチストが、自分にふさわしいオリジナルのメディアを作ってしまうことがあってもいいじゃないか。
かつて佐野元春がみずから発行した雑誌「THIS」は、そんな勇気ある試みだったんだ。


大きな威力を発揮するのは、ズバリ「ライブパフォーマンス」である。


こんな興奮や感動を与えられるのは、ライブでしかないと思う。

ライブは君たちを宣伝する最大のチャンスだ。
迷っていた人は、間違いなくその翌日に、君たちのCDを手に入れるだろう。

ライブハウスでもCD即売を見かけることが多くなったが、すばらしいライブが終わったあとのCD売り場にはファンが殺到している。

僕も、関係するライブでのCD即売はいつも気になっている。
特に、新人としてデビューしたばかりのころは、レコード店にそう多くの枚数が出ていないから、ライブ会場で初めてファンの目にCDがふれることも多い。

だから、ライブの良いバンドは、とても貴重な存在なんだ。
最初は、数十人のお客だけを前にしていたバンドも、内容さえ良ければ確実にそのファンの数は増えていく。
次に百人。

さらに、二千人の渋谷公会堂へ、ついには、一万人の日本武道館へ・・・・・・。

順調に進んでも、まぁ五年はかかると思っていいだろう。



年齢層を考えると、ロックに興味を持っている人は、深夜番組や衛星放送のほうが確実に多いはずだ。
ロック専門テレビを見る人の全体数は少ないが、その100%の人が、新人バンドになにがしかの興味を持って見ているはずだ。

また、このようなテレビ局のスタッフは、噂を聞きつけて新人のライブに足を運ぶことも多い。



電波メディア(ラジオ、テレビ関係)のスタッフは、その番組を作ること自体に大きな目標をもっているようだ。
つまり、番組自体が評判となり影響力を持つことが、彼らの製作スタッフとしての達成感を支えている。

しかし、特に音楽専門誌のスタッフに関しては、雑誌全体よりも、自分が担当している一つの記事、一組のアーチストの評価や動向が、次の自分の仕事を左右する。

雑誌全体の売れ行きや評判を気にしているのは、おそらく編集長だけだろう。


プロとしての大きな変化は、制限された時間の中で最大の成果を求められることにある。これまでに書いたような、マスコミとのつきあいや取材が増えるのはまちがいない。

限られた時間と環境のなかで、どれだけベストの作品を作り出すことができるか。プロとアマチュアの最大の違いは、ここにあると言えるだろう。



ロックは、自分の身を削っての自己表現だ。

スタッフがいくら優秀であっても、アーチストみずからが切り開いて音楽を作っていく。

しかし、映画やテレビドラマは、監督が絶大な力を持っている。

その要求のなかでいかに自分を表現していけるかが、役者の使命になっていく。


スタッフの条件としては、ポイントが四つある。

「愛情」「知識」「企画」「行動」だ。

アーチストを本当に愛しているか。
議論するときに必要な音楽の知識が、どのくらいあるか。他人をノセルためのプラン、企画力があるか。

誰よりも早い行動力を持っているか。
この四つのポイントは、努力次第で、誰にでも身につけることができるはずだ。

音楽がすきなのは、スタッフとしての常識。
プロフェッショナルに、ビジネスとして「スタッフ」を名乗るのなら、このポイントに向けて、最大の努力を傾けるべきだろう。


オーディションを見るとき、最も気になるポイントは? よく質問されることである。

ずばり、ヴォーカルと楽曲だ。
一、二曲しか聴けないことが多いのでこれがすべてではないが、まずこの二点からすべてが始まる。

いい声、いい歌であってほしいのはあたりまえだが、それ以上に個性的であること、オリジナリティを感じられることが重要なんだ。

他のアーチストにはないものが聞こえてくることである。

ライブパフォーマンスやサウンドは、この歌と曲を引き立たせるものだから、元が悪ければすべてダメと言ってもいいだろう。


よく、ルックスやファッションのセンスを話す審査員がいるようだが、これは、他に話すことが見つからないための言いわけにすぎない。

すべてが揃っているにこしたことはないが、見ばえだけで音楽は語れない。

しかし、いい音楽があれば、そこからファッションとルックスを作り出すことは可能だ。

僕たちは、まずは音だけで仕事を始めるのだから、楽曲、ヴォーカル、本音の会話、この三つが揃えば、ファーストステップはクリアである。


フライング・キッズの再生と成功の例は、音楽活動を長く続けて実を結ぶ、すべてのミュージシャンに当てはまる教訓になると思う。

持続力と、チームワーク。

メンバー間のチームワーク。

メンバーとスタッフのチームワーク。

ロック、ポップスという音楽ジャンルは、アーチストの才能がすべてを左右する世界だから、持続力とチームワークという二点は最大の武器だといっていいだろう。


プロデビューをめざしての練習は、まず、レパートリーを増やすことだ。

つまらない曲が大半でも結構。

百曲作れば、ヒット曲の可能性がその中に一曲はあるはずだし、いろんな意見を聞いているうちに、君の曲作りの内容も自然に進歩してくるはずだから。
アップテンポ、バラード、ロックンロール、ブルース、レゲエ、16ビートのファンク、4ビートのジャズ、6/8のポップス、ビートルズ風、ストーンズ風、ディラン風、ビーチボーイズ風、ギターサウンドのブリットポップ・・・・・・。


僕の個人的な考え方だが、甘い曲には辛い歌詞を、激しい曲には優しい歌詞を。そんな逆説が一曲にまとまっていると、個性が浮きぼりになって、他との差別化をはかりやすいことがよくあるようだ。


リズムの練習を徹底的にくり返すこと。

リズムボックス(ドンカマ)を使って、一定のリズムをキープするように心がけよう。
「ロックンロールはノリ一発だから、ドンカマなんて使わないよ」と言う人もいるが、これは、よっぽど自分のリズム感に自信を持っている人だけのセリフだ。

とにかく、理屈を言う前に、ドンカマを使ってリズムを鍛えよう。

僕が新人バンドをチェックする
ポイントは楽曲とヴォーカルだが、リズムがいいのはその大前提なんだよ。


バンドのメンバーは、一人一人が大事な役割を持っている。

しかし、ヴォーカリストは誰が見ても、バンドの顔である。
バンドのすべてではないが、ヴォーカルによって、そのバンドの表現は一変するんだ。

歌の内容、そのキャラクターは、そのバンドを代表する。

演奏がド下手なバンドだが、ヴォーカルがすばらしいということがある。

時間がたてば、演奏は目に見えて上達してくるものだ。

しかし、その逆には出会ったことがない。

楽器演奏は、個人での練習よりも、チームワークによってうまくなることが多い。

バンドマジックとよく言うが、やはり、バンドのアンサンブルが個人の技術をカバーすることができるからである。


コピーをすることで、あこがれの洋楽アーチストの本音が聞こえてくる。

初めて出会ったミュージシャンとセッションをする機会が増え、新しい音楽仲間ができる。

君が作るオリジナル曲へのヒントになって、作品の幅が広がり、可能性も大きくなる。

リハーサルで煮つまったときには、息抜きのセッションで盛り上がる。

日本語の歌詞をつけて歌ってみたら、思わぬ言葉が浮かんできた。
歌い方にも、新しいトライができる。

ロックンロールの名曲をレゲエに変えて演奏してみると、自分たちのサウンドに近づいた曲になった。

ライブでコピー曲を一曲だけはさんで演奏したときに、ファンが総立ちの大合唱になって、今までになかったような盛り上がりになった・・・・・・。

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