3/12/2008

「ウェブ時代をゆく」梅田望夫








「ウェブ時代をゆく」

序章 混沌として面白い時代
「知的で明るい大人」
ネットが「個」の固有性を発見し増幅することにおいて極めて有効な技術であること。
混沌とした面白い時代
「個」が精神的に自立すれば、混沌の時代も全く新しい自由な可能性空間として見える。
「新しい職業」が生まれる可能性。
脅威はチャンスに・。
「パブリックな意識」を強く持つ。


福沢諭吉
「恰も一身にして二生を経るが如く、一人にして両身あるが如し」
養老孟司
「時代というものがあって、いまの時代は年寄りが威張る。そんな時代に若い人はどうすればいいか。いちばんまともな生き方は、年寄りがダメな世界で頑張ること。ならばウェブは格好の分野ではないか」
音極道茶室ブログ主
「全てのWEBエンジニアはいま『産業革命前夜』のイギリスにいる」
羽生善治
「学習の高速道路と大渋滞」
リーナス・トーバルズ
「リナックス・ハッカーたちが何かをするのは、それがとってもおもしろいと思うからで、そのおもしろいものをみんなと共有したいんだ」
江島健太郎
「いま我々はネットという突如として眼前に広がった『世界』に対してのみ有効な『第六感』を発達させる、長い長い進化の途についたのだ」
第一章 グーグルと「もうひとつの地球」
検索連動広告という大鉱脈、パブリックでオープンでフリー、富を生み出すエンジン

これからもパブリック空間に現れる新しい脅威なら、グーグルは迷わず内部に取り込んでいくだろう。
エリック・シュミット

    「グーグルは、コンピュータ・サイエンティストによって経営されている会社だ」

海部美知
「ウチの子供たちを見ていても、具体的なモノを買いたいという要求は最近あまりない。(中略)じゃあ何を面白がっているかというと、何かをクリエイトすることかな、と思う」
第二章 新しいリーダーシップ
アルビン・トフラーは現代を生きる人々の特徴として「貨幣経済の外側で活動する能力を高めている」と主張する。それは、ウェヴ進化を「経済のゲーム」としてではなく「知と情報のゲーム」としてとらえるべきだ、という私の問題意識と重なる。



吉岡弘隆
「世界でまともとゆきひろのように自分で作ったプログラムを公開している人は少なくなくて(実際大変多い)、それらのソフトウエを大雑把にくくって、オープンソースソフトウエアとかいったりするのだけど、世界中には無償の愛があふれているのである」
まつもとゆきひろ
「そんなに遠くない未来には(オープンソースで飯を食うことが)『簡単ではないけど実現可能な夢』と認識されるようになると、私は固く信じている」
石黒邦宏
「リチャードの書いたプログラムにはスタイルがあった。あばら屋でないれっきとした構築物でした。これは作品なんだ、文学と同じような芸術作品なんだ、と心から理解しましたね」「この間数えてみたら、十年連続で毎年十万行以上プログラムを書いたいたことになるんですよ」「成功するかどうかは、人生をうずめている奴が一人いるかどうかですね」
ジミー・ウェールズ
「基本的には人を信じること、人は正しいことをするものなのだという信頼がなければ、ウィキペディアのような共同モデルは成り立たない」
瀧口範子
「無数の人々が無数のことを自分でやるようになるようにつれ、貨幣活動の外側の活動がどんどん増え、貨幣経済と拮抗するようになる」「動機はさまざまで、その多様さ自体がこの変化の特徴なのだ」
小飼弾
「今までは組織への加入は『全人参加』がデフォルトだったのですが、ネットによってこれは『気持ちだけ参加』が可能になったわけです。そして今後は『気持ちだけ参加』こを普通になるのではないかと思います」
平野啓一郎
「人がただ自分のことしか考えなくなってしまう、自分にとって心地よいことにしか関わり合わなくなるという危惧は、やっぱりありますけど」
第三章 「高速道路」と「けもの道」
時間だけがすべての人に平等に与えられたリソースである。その時間を、自らの志向性と波長の合う領域に惜しみなくつぎ込む。それが個を輝かせる。大切な時間というリソースを自分らしくどう使うのか。そこがこれからはますます問われる。

考えてみれば、学者や芸術家の世界で超一流の仕事をする人たちは皆、自らの志向性を早い時期に発見し、自らの志向性と波長のぴったり合った対象へ深い愛情を持ち、対象に没頭し、長期にわたり自分の時間を惜しみなく投じ、勤勉なコミットメントを続けるという資質を共通に有している。しかもその没頭に終わりはない。



日本社会は、エスタブリッシュメント層の中枢に坐る大企業経営者、官僚、マスメディア幹部の大半が、いったん属した組織を辞めたという個人的経験をまったく持たない。だから「大組織を離れる」イコール「路頭に迷う」「人生のレールをはずれる」みたいな極端な表現をカジュアルに口にし、それがあたかも真実であるかのような錯覚を人々に与える。・・・・「好きを貫いて生きていけるほど、世の中、甘いもんじゃない」という大人の言葉は、日本社会の中枢にいる人々の傾向と表裏一体をなすものである。



大企業で成功する要素は、

1、配属、転勤など「自分の生活や時間の使い方を他者によって規定されること」を、「未知との遭遇」として心から楽しめる。

2、与えられた問題・課題を解決することに情熱を傾けることができる。

3、一緒に働く人への好き嫌いがない。仮にあっても、苦手を克服することを好む。

4、ルールを与えられるとそのルールの意味をすぐに習得してその世界で勝つことに邁進することに興味を覚える。

5、多くの人と力を合わせることに充実感を覚えるチームプレーヤーである。

6、「組織へのコミットメント」をいとわず、それを支える持久的体力にすぐれている。

7、忠誠心や使命感のほうが、個の志向性よりも価値が高いと考える。



人生の幸福とは「好きを貫いて生涯を送ること」だと私は思う。人からどう見えるとか、他人と比較してどうこうという相対的基準に左右されるのではなく、自分を信じ、好きを貫く人生を送ること。本当の幸福とは、そういう心の在りようにこそあると思う。



たとえば将棋の世界の「けものみち」とは、「将棋に勝つ」ということ以外の方法で、「将棋に関わって飯を食う可能性空間」のすべてである。いずれにせよ、将棋と将棋以外の異質なものを組み合わせるさまざまな営みにおける「人間の総合力」が試されるのが「けものみち」だ。



正しいときに正しい場所にいる。in the right place at the right time





遠山雄亮

    「そして今現在、この完成した高速道路を猛スピードで走っている『少女』がいる(中略)そうでなければ、島根に住みながらあれだけの力を手にする事はありえない」

aiai
「タダの高速道路が出来たのに、なんでみんな歩いてるんだよ!なんでどこにも行こうとしないんだよ!」
平野啓一郎
「僕らの世代は呪文のように『個性が大事』といわれつづけましたが、そのわりには学生時代には個性を発揮する機会もたいしてない」
アンディ・グローブ
「Only the Paranoid Survive.」
スティーブ・ジョブズ
「The only way to do great work is to love what you do.」
ロジャー・マクナミー
「若者はバンテージ・ポイントに行くべきだ」
第四章 ロールモデル思考法
「孤高の挑戦者たち」(今北純一著、日本経済新聞社)
今のネットビジネスの世界などもそうだが、エスタブリッシュされていない「新しい職業」の世界は、過去の実績や経験より、情熱のようなわけのわからない要素も、未来志向でポジティブに受け止められやすい。

ロールモデル思考法とは、ただ「誰かみたいになりたい」「こんな職業につきたい」という単純な願望から一歩進み、自分の志向をより細かく定義していくプロセスである。




小柴昌俊
「大事なのは、『自分はこれをやりたい』というものを見つけること。それが人生でいちばん大切なことです。もちろん簡単ではない(中略)それでも何とか見つけ出さなければいけない」
金子恭規
「もう一回若くなりたいですね。若い心を持って、スタンフォード大学やMITを毎日うろうろ歩いていれば、必ず何人かのとてつもない天才に出会えるでしょう。そいつらと一緒に大きな仕事をまたしてみたいですね」
第五章 手ぶらの知的生産
エリック・シュミット
「あなたのコンピュータの前にすわって、わずか一秒以内に、過去に書かれたすべての本を全文検索することを想像してみよう」
渡部昇一
「知的生活の重要な部分は本の置き場の確保ということに向かわざるをえないのである」
近藤淳也
「インターネットは知恵を預けると利子をつけて返してくれる銀行のようなものだ」
bookscanner記ブログ主
「ブログを続けたことで多くのことを学び、楽しい出会いに恵まれた」
茂木健一郎
「いまはごく普通の人でも、ネットというものを使うと、昔なら一部の公人にしか与えられなかった試練にさらされ、成長することができる」
第六章 大組織 VS. 小組織
「大きな組織」は入りにくく、いったん外に出たら再び入るのが難しいから、出にくい。一方、「小さな組織」は入りやすく、出やすい。「小さな組織」は、学歴や経歴より「いま何ができるか」が問われる傾向がある。

「炭鉱のカナリア」力
1、世の中と比べ、おそろしくゆったり時間が流れている組織は、要注意。
2、毎日同じことの繰り返しで変化があまりない仕事は、要注意。
3、新しいことを何もしないことが評価される社風は要注意。石橋を叩いて渡る堅実経営が悪いわけではないが、そのやり方だ体に染み付くと外で使えない人になる。
4、小さなことでも個に判断させず、判断の責任を集団に分散する傾向のある会社は要注意。
5、幹部の顔ぶれを眺めたとき、「その会社に関するプロ」ばかり重用されている会社は要注意。その会社の外ではまったく役に立たない。

「時代の変わり目」を意識して一番気をつけなければならないのは、優等生たちだ。優等生とは、古い仕組みのなかで、最も適応できてきた人たちだから、「一身にして二生を生きる」くらいガラッと変わった世界に、突然45歳とかで投げ出されてみると、いちばんに淘汰させる可能性がある。「古い価値観」を信じることができたから「いい学校へ、いい大会社へ」という「人生のレール」なるものを走ることができ、いまここで起きている大変化からも冷静に距離をおくことができているのかしれない。「古い価値観」を少しずつでも疑ってかかるといい。
グーグルのインターン経験者某氏
「八週間後には大学に戻る私たちが、グーグルのサービスを構成するソースコードのライブラリのすべて、開発中のプロジェクト計画の詳細はプロトタイプ、社員がメール代わりに業務連絡やアイデア出しのために日々更新するブログまで、何から何まで全部アクセスできるんです」
某日本企業の社長
「有事のときには、君が話してくれたような情報共有は、日本企業でも自然に行なわれるんだ。(中略)(平時でもこれを行なうことは)君が提起してくれた問題の中で、実現するとなるとこれがいちばん難しい話だな」
アンディ・グローブ
「組織内のカサンドラを大切にせよ」
第七章 新しい職業
● あらゆる面で徹底的にネットを活用すること。自分の志向性や専門性や人間関係を拠り所に「自分にしか生み出せない価値」(さまざまな要素からなる複合技)を定義して常に情報を発信していくこと(ブログが名刺になるくらいに。自分にとって大切ないくつかのキーワードの組み合わせで検索すると自分のエントリーが上位に並ぶようなイメージ)。
●自分の価値を理解して対価を支払ってくれる人が存在する状態を維持しようと心掛けること。
●コモディティ化だけは絶対にしないと決心すること。
●自らのコモディティ化に対してだけは「Paranoid」であるべきで、その予感があったら必ず新しい要素を自分の専門性やスキルに加えていくこと(そのときも高速道路を大いに利用しよう)。
●積極的に人間関係を構築し、人との出会いを大切にすること。
●組織に属するときでも「個と組織の関係」においてきちんと距離感をとって、組織の論理に埋没せず、個を輝かせようと努力すること。

コールトンは、ビッグヒットを放つタイプのミュージシャンを目指すのではなく、ネット上に「志向性の共同体」を形成し、ファンと一体となった親密な空間をマネジメントすることで生計を立てている。月収の内訳は、ダウンロード販売とCD販売でその70%。ライブ・チケット販売で18%。その他Tシャツ等オンライン販売。つまり、月収の大半は、無償でも手に入る曲にファンが自発的にお金を支払うことに依存している。
どうのようにして彼はそんな現在に至ったのか。毎日ブログを書き、少しずつ増えていくファンからの反応を眺めながらコールトンは、ファンはアーティストと友達になりたいのだという重要な発見をしたのである。

「スモールビジネスを作る」のと「ベンチャーを起こす」のはぜんぜん違うことだ。前者はこれまでの仕事や生活の延長で考え得るカジュアルなことだが、後者は大きな決心と責任を伴う「期限付きで挑戦するビジネスゲーム」である。スモールビジネスは、事業の成長も創業者や経営者のライフスタイル次第だし、先行投資は利益の範囲で好きなだけやればいい。極端な話、別に成長を目指さなくたっていい。
一方、ベンチャー創業者は融資ではなく投資で資金(リスクマネー)を調達する。それによって創業者は「失敗しても返さなくていいお金」を得て、投資家はそのベンチャーの株式を保有する。短期間で「ゼロから大きな可能性を秘めた成長事業に創造する」目標に向かってビジネスゲームが始まる。・・・・いつも時間に急かされた厳しい日常が続く。

某大学生
「『ウェブ進化論』を読んでネットの『あちら側』にわくわくした気持ちになったのだけれど、教授や親から勧められる就職先はみな『こちら側』の世界ばかりで、どうしようか悩んでいる」
梅田晴夫
「新しい世界は、そこに新しく入ってくる人たちをとても大切にしてくれる。そして何より新しい世界は面白く楽しかった。新しい世界を歩いてきたことに後悔は全くないよ」
小林秀雄
「心掛け次第で明日からでも実行が出来、実行した以上必ず実益がある、そういう言葉をほんとうの助言というのである」
アンドリュー・モートン
「(なぜGoogleはあなたを招いたのでしょうという問いに)私も知りたいですね(笑)」
終章 ウェブは自らを助くる者を助く


司馬遼太郎
「もしこの地球上にアメリカという人工国家がなければ、私たち他の一角にすむ者も息ぐるしいのではないでしょうか」
村上春樹
「君はただの吸い取り紙になるんだ。なにを残してなにを捨てるかは、あとになってきめればいいんだからさ」
アンディ・グローブ
「Sonner or later, something fundamental in your business world will change」
    「only the paranoid survive」(病的なまでに心配性は人だけが生き残る)

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